
「もうダンス辞めたい」
子どもから突然そんな言葉を聞いたら、保護者の方も戸惑うのではないでしょうか。
せっかくここまで続けてきたのに。
もう少し頑張ってほしい。
無理をさせるのも違う気がする。
さまざまな思いが浮かぶと思います。
私たちも日々子どもたちを指導する中で、習い事を続けることについて保護者の方からご相談をいただくことがあります。
最初にお伝えしておきたいのは、習い事を辞めることそのものが悪いわけではありません。
生活環境が変わったり、別にやりたいことが見つかったり、その習い事が本人に合わなかったりすることもあります。
一方で、
「今日注意されたから辞めたい」
「思ったポジションになれなかったから辞めたい」
「友達と少し嫌なことがあったから辞めたい」
といった、その日の感情だけで大きな決断をしてしまうのは少しもったいない場合もあります。
今回は、子どもが「習い事を辞めたい」と言ったとき、親として一度考えてみてほしいことを、ダンス指導者の立場からお伝えします。
1.まずは「なぜ辞めたいのか」を聞いてみる
「辞めたい」という言葉の裏側には、さまざまな理由があります。
・レッスンが難しくなってきた
・先生に注意された
・友達との人間関係に悩んでいる
・自分だけ上手くできない
・練習することが面倒になった
・他にやりたいことができた
・曜日や時間が負担になっている
・そもそも、その習い事自体に興味がなくなった
同じ「辞めたい」でも、理由によって対応はまったく違います。
まず大切なのは、
「辞める・辞めない」をすぐに決めることではなく、本人が何に困っているのかを知ること。
「何が嫌だったの?」
「いつ頃からそう思っていた?」
「どうなったら続けられそう?」
そんなふうに、一度ゆっくり話を聞いてみてください。
2.「一時的な嫌」と「本当に合わない」を分けて考える
習い事をしていれば、楽しい日ばかりではありません。
上手くできない日もあれば、先生から注意されることもあります。
ダンスであれば、
振付が覚えられない。
思うようなポジションになれない。
友達の方が上手に踊れている。
発表会の練習が大変。
そんな壁にぶつかることもあります。
そこで感じる「辞めたい」は、必ずしも
「ダンスそのものが嫌い」
という意味ではありません。
一時的な悔しさや失敗から逃れたい気持ちなのか、それとも長期間苦痛を感じているのか。
ここは分けて考える必要があります。
例えば、
「あと1か月だけ続けてみよう」
「次の発表会まではやってみよう」
など、少し期間を置いて考える方法もあります。
その間に気持ちが変わる子も少なくありません。
3.困ったことがあったら、まず先生に相談してみる
子どもの話だけを聞いていると、教室で起こっていることの全体像が分からない場合があります。
もちろん、子どもの気持ちを疑うということではありません。
ただ、子どもが見えている景色と、指導者が見えている景色が違うことはあります。
例えば、
「先生に怒られた」
という話でも、
なぜ注意されたのか。
その前に何があったのか。
他の生徒との関係はどうだったのか。
背景を確認すると、印象が変わることもあります。
反対に、指導者側が気づいていない悩みを子どもが抱えていることもあります。
だからこそ、
退会を決める前に、一度教室へ相談してみることも選択肢のひとつです。
クラス変更やレベル変更、受講する曜日を変えることで解決できる場合もあります。
4.「辞めれば嫌なことがなくなる」だけにしない
私たちが教育として特に大切だと考えている部分です。
子どもが困難に直面したとき、
「嫌だったら辞めればいい」
という経験だけが積み重なってしまうと、少し心配があります。
学校でも、仕事でも、人間関係でも、大人になるにつれて「思い通りにならないこと」は必ず出てきます。
もちろん、心や身体を壊してまで我慢する必要はありません。
しかし、
少し難しい。
少し悔しい。
注意された。
上手くできなかった。
というだけですぐその環境から離れるのではなく、
「どうしたらできるようになるだろう」
「もう少しやってみようかな」
と考える経験も、子どもの成長には大切だと考えています。
習い事は技術を身につけるだけではなく、こうした経験を積む場所でもあります。
5.ただし「続けること」が目的になってはいけない
一方で、何があっても続けさせればよいわけではありません。
明らかに本人が長期間苦痛を感じている。
教室の雰囲気や指導方針が合わない。
他に夢中になれるものを見つけた。
生活環境が変わり、通うこと自体が負担になった。
このような場合には、辞めることが前向きな選択になることもあります。
大切なのは、
「辞める=失敗」
と考えないことです。
それまで続けてきた時間や経験がなくなるわけではありません。
ダンスを半年習った。
一年続けた。
発表会に出演した。
人前で踊った。
それらはすべて、その子の経験として残ります。
6.辞めると決めたときこそ「終わり方」を大切に
私たちは、習い事を辞める経験も教育のひとつだと考えています。
例えば、
先生に挨拶をする。
一緒に頑張ってきた友達に挨拶をする。
最後のレッスンまできちんと参加する。
子ども自身が、
「今までありがとうございました」
と言えることも、大切な社会経験です。
突然来なくなるのではなく、ひとつの区切りをつける。
こうした経験は、これから先、学校・部活動・アルバイト・仕事など、さまざまな場面で役立っていきます。
7.親が決めるのではなく、親子で考える
習い事を続けるかどうかについて、
すべて子ども任せにする必要もなければ、すべて親が決める必要もありません。
特に小学生くらいまでは、その日の感情で
「もう辞める!」
と言うこともあります。
だからこそ大人が、
「今日は嫌だったんだね。でも本当に辞めたいのかな?」
と、一緒に考えてあげることが大切です。
続けること。
辞めること。
どちらを選ぶにしても、
自分で考え、話し合い、納得して決めた経験そのものが子どもの成長につながります。
ユースダンスプロジェクトが大切にしていること
ユースダンスプロジェクトでは、ダンスの技術だけを教える場所ではなく、子どもたちがさまざまな経験を通して成長できる場所でありたいと考えています。
思うように踊れない日もあります。
注意されて悔しい日もあります。
友達と上手くいかないこともあるでしょう。
でも、その経験を一つずつ乗り越えた先に、
「できた!」
という喜びがあります。
もちろん、本当に困っていることがある場合には、私たち指導者も一緒に考えます。
「最近レッスンに行きたがらない」
「本人が辞めたいと言っている」
「友達関係で悩んでいるようだ」
そんなときは、退会を決める前でも構いません。
ぜひ一度、担当講師へご相談ください。
続けることだけを目的にするのではなく、
その子にとって何が一番良い経験になるのか。
保護者の皆さまと一緒に考えていける教室でありたいと思っています。