知っておきたい空間認知のこと
ほとんどのダンスはスタジオや舞台といった限られた空間で踊られます。舞台で上演されるダンスの場合は、舞台という空間を如何にうまく使うかで、そのパフォーマンス性に違いが生まれます。
例えば、バレエでは、客席から見て右手奥から舞台の対角線上をよく動きます。
また移動を伴う回転動作は、右足を軸に時計回りに舞台を周回します。
それに対し、狂言や能といった日本の伝統芸能は、移動が少なく、斜めよりも前後の移動が多いのも特徴です。
ストリートダンスの場合では、踊る人数や作品のコンセプトによっては舞台の広範囲を使用し、様々なフォーメーション移動を展開することもしばしばです。
このようにダンスの種類によって、舞台で踊られる踊りには、空間の使い方に特徴があります。
一方で、ダンサーは、こうした空間移動を正確に行う能力も求められます。
ストリートダンスでは、踊りながら移動したり、フォーメーションを形作ったり、さらには他のダンサーとの距離感や立ち位置を瞬時に判断して自分の立ち位置を修正する能力が必要になります。
舞台で踊る場合には、バミリといって、舞台上に客席から見えない位置に小さな目印を貼ることもありますが、すべての踊り対して目印をつけていたら舞台上目印だらけになってしまいますから、多くの場合には、ダンサーの感覚に頼って空間を上手に使うことが要求されます。
一人で踊っている場合には、どこで踊ろうとも問題は起こりませんが、大勢で踊るといった場合には、大勢の中から自分だけはみ出してしまうという問題も生じます。
これまで述べたダンスにおける空間認知機能は、運動能力と同様に個人差がみられます。
ダンスで必要とされる空間認知機能は他のスポーツや職業でも大いに役立つと言われており、特に幼少期から大勢の中で踊り、舞台に立つ経験を積むことで鍛えられていくと考えられます。
ダンスにおいて、振付だけではなく、フォーメーションを覚え、踊りながら自分の立ち位置を認識し、判断することは大人でも難しい作業です。
子供のうちから、ダンスや舞台で経験を積み、空間認知能力を養うことは、将来必ず役に立つことでしょう。
最終更新日:2020年1月09日